2023.09.01
墨黒ホース
今回は墨黒ホースについてご説明します。
「日本を代表する素晴らしい手法を革ジャンで表現したい」と始めた素材「インディゴホース」、「柿渋ホース」。
共に国内外より多くのご注文を頂いております。
藍、柿渋のような日本らしい黒、そう「漆黒」を革ジャンで表現したいと思い、数年前よりタンナーと革を墨で染める研究を始めました。
そして昨年度、無事商品化に成功した「墨黒ホース」。
まずは墨の選定から始め、古来より墨に縁深い奈良県・三重県の素材に絞りそれぞれの特徴、長所、短所を調べました。
その中で1400年に渡って受け継がれた奈良墨を採用することとなりました。
奈良墨は伝統工芸品にも指定されており菜種や胡麻、桐の油を燃やしてつくる油煙墨(ゆえんぼく)に該当します。
奈良墨の制作工程には墨職人の繊細な技術が必要なため機械化できる作業が少なく、今なお手作業で行われております。
そんな素晴らしい墨に出会え、いよいよ染色です。
染色を始める前にまずフルベジタブルタンニン鞣しを施します。
芯をサドルで仕上げた後に銀面、スエード面を墨で染色するのですが、これがとても難しく作業です。
2枚目の写真より、芯のみ色が染まっていないのをご覧いただけます。
染料が多すぎると中の芯まで黒色におかされます。
その加減が非常に難しいんです。
革馴染みに関してですが、墨の粒子は通常の染料よりも粗く、さらに馬革の銀面は牛革に比べ粗大なので馴染ませるのに細心の注意が必要でした。
しかし、元々の肌が柔らかいので丁寧に馴染ませるとその分、墨が綺麗に銀面の層に入りこみます。
そのような工程を経て仕上がった墨黒ホース。
着用し革が剥げると茶色より薄い色なので、コントラストが気になるかと思います。
しかしヌメなのでオイルを入れたり、焼けると色が濃くなります。
ここで説明を終えたいところですが、最後にさらにひと手間加わっています。
仕上がった革に風合いを出すため「ミーリング加工」を施しております。
簡単に説明すると革をもみほぐすようなイメージです。
最初から革馴染みもよく、銀面に動きが出やすいです。
漆黒からすれてサドルが出て、それが少しずつ焼け茶褐色にエイジングするようなイメージです。
なかなか通常の黒では味わえない「墨黒」。
是非ご体験ください。